パソコンを捨てる、売る、人にゆずる。その前に必ずやっておきたいのが、中のデータの消去です。電子情報技術産業協会(JEITA)は、ファイルを削除して「ごみ箱を空にする」、ドライブをフォーマットする、といった操作では、ファイルの管理情報が変わるだけで、特殊なソフトを使えば読み取れる場合があると注意しています。実際、ごみ箱を空にしただけのファイルは、データ復元ソフトで戻せることがあります。

そして、JEITAもパソコンの回収を担うパソコン3R推進協会も、データの消去は利用者自身の責任だとしています。回収に出す前に、自分で消去しておく必要があります。

この記事では、まず無料でできるWindows・Macの標準機能の手順を説明し、そのうえで、より確実に消したい人向けのデータ消去ソフト3本を、各公式サイトの情報(2026年9月24日時点)をもとに、機能性・使いやすさ・コスパ・拡張性・安定性の5軸で比べました。

先に結論

  • 家庭のパソコンなら、まずは無料の標準機能で消去する。Windowsは「PCをリセット」でデータのクリーニングを「はい」にする、Macは「すべてのコンテンツと設定を消去」(消去の前にバックアップとアカウントの解除を)
  • SSDのパソコンを念入りに消したい、消去の記録を残したいなら、HD革命/Eraser(3,960円)
  • 消去証明書が必要なら、ターミネータ10plus 消去証明書発行機能付(5,280円)
  • 電源が入らないパソコンは、回収業者の有料消去サービスを使う

ごみ箱・フォーマット・ふつうの初期化では、データは完全消去されない

JEITAの「パソコンの廃棄・譲渡時におけるハードディスク上のデータ消去に関する留意事項」によると、次の操作ではデータは完全には消えません。

  • ファイルを削除して「ごみ箱」に入れる、ごみ箱を空にする
  • ドライブをフォーマットする
  • 購入時の状態に戻すリカバリー(消去の機能を使わない場合)

JEITAが有効な方法として挙げているのは、①専用のソフトでドライブ全体を1回以上上書きする、②磁気で消す(SSDには使えない)、③物理的に壊す、の3つです。上書きの回数は、1回でも十分な効果があり、2回行えばほぼ完全としています。

消去の前にやること

消去すると元に戻せません。消す前に、次のことを済ませてください。

  • データのバックアップ:残したい写真や書類を、外付けHDDやクラウドに移す(無料のバックアップソフトの比較)。新しいパソコンへ移す手順はパソコンのデータ移行方法を参照
  • BitLocker(デバイスの暗号化)の回復キーを控える:マイクロソフトの公式サポートによると、暗号化されているパソコンでは、リセットの途中で回復キーを求められることがある
  • Microsoft 365・Adobeなど、台数制限のあるソフトのサインアウトや認証解除
  • Microsoftアカウントの「デバイス」一覧から、そのパソコンを外す
  • USBメモリやSDカード、DVDの抜き忘れを確認する

無料の標準機能で消去する手順

Windows 11:「PCをリセット」でデータのクリーニングを実行

  1. ACアダプタをつなぐ(時間がかかるため)
  2. 「設定」→「システム」→「回復」を開き、「このPCをリセット」の「PCをリセットする」を選ぶ
  3. 「すべて削除する」を選ぶ
  4. Windowsの入れ直し方(クラウドからダウンロード/ローカル再インストール)を選ぶ
  5. 「追加の設定」の「設定の変更」を選び、「データのクリーニングを実行しますか?」を「はい」にする(初期状態は「いいえ」。マイクロソフトの説明では「データのクリーンアップ」)
  6. 画面の案内に沿って「リセット」を押す

マイクロソフトの公式サポートによると、「データのクリーンアップ」を有効にすると、ファイルが削除され、ドライブがクリーンアップされます。公式は、PCの寄付・リサイクル・販売を予定している場合はこのオプションを使うよう案内しています。時間はかかりますが、削除したファイルをほかの人が回復するのが難しくなります。途中で画面が15分以上黒くなることもあります。

ただしマイクロソフトは、この機能は一般の利用者向けで、政府や業界のデータ消去基準は満たしていないとも書いています。仕事のデータを扱ったパソコンや、消去の記録が必要な場合は、下のデータ消去ソフトや業者のサービスを使ってください。

PCを初期状態に戻す方法を見る(マイクロソフト)

Mac:「すべてのコンテンツと設定を消去」

macOS Monterey以降の、Apple シリコンのMacとT2セキュリティチップを搭載したIntelのMacでは、「システム設定」→「一般」→「転送またはリセット」→「すべてのコンテンツと設定を消去」で消去します。Appleの公式ガイドによると、この操作でデータを守っている暗号の鍵が消去され、すべてのユーザーデータが暗号の仕組みによって読み出せなくなります。

それより古いIntelのMacは、macOS復旧から「ディスクユーティリティ」で起動ディスクを消去し、macOSを再インストールします。

HDDとSSDで違う、完全消去の注意点

最近のパソコンの多くは、HDDではなくSSDを使っています。Windowsでは、タスクマネージャーの「パフォーマンス」でディスクの種類(SSD・HDD)を確認できます。

SSDは、書き込みを内部で分散させる仕組みがあるため、上書きしても全部の領域が消えるとは限りません。

  • JEITA:SSDは上書きしても全エリアが消去されるとは限らないが、現実的にはHDDと同じようにデータを消去すれば十分。心配なら、SSD向けの「Secure Erase」などに対応した有償サービスを使う
  • 米国立標準技術研究所(NIST)のガイドライン:SSDへの何度もの上書きは効果が薄く、より確実さが必要なら、SSD自身に全領域を消去させる命令(Purge)を使う。磁気での消去はSSDには使えない

JEITAは、SSDも現実的にはHDDと同じように消去すれば十分としています。仕事のデータを扱っていた場合など、より確実に消したい場合は、SSD向けの消去方式に対応したソフトを使います。SSDのメーカーによっては無料の専用ツールもあり、たとえばSamsungの「Samsung Magician」には、Samsung製SSD向けのSecure Erase機能があります。

データ消去ソフト3本の早見表

ソフト価格SSD向け消去記録の出力ファイル単位
HD革命/Eraser3,960円○レポート×
ターミネータ10plus5,280円×証明書×
ドライブクリーナーEX3,980円××○

※ 2026年9月24日時点の各公式サイト・販売店の情報です。価格は税込みの買い切り価格です。購入するのは、HD革命/Eraserは「Ver.8 パソコン完全抹消」、ターミネータ10plusは「データ完全抹消 消去証明書発行機能付」です。

※ 3本とも、USBメモリなどで作った起動用メディアからパソコンを起動し、Windowsが入っているドライブ全体を消去できます。

※ 「SSD向け消去」は、SSD自身に全領域を消させる命令(Secure Erase・Sanitizeなど)に公式に対応しているかどうかです。「×」の製品もSSDの上書き消去はできます。

総合評価:消去の確実さ・記録・更新で比べる

ソフト機能性使いやすさコスパ拡張性安定性合計
HD革命/Eraser◎○○◎○7
ターミネータ10plus○○○○◎6
ドライブクリーナーEX○○○○○5

※ 上から順に1位〜3位です。総合はHD革命/Eraserとターミネータ10plusが○、ドライブクリーナーEXが△です。採点の方法は記事の後半にまとめています。

1位 HD革命/Eraser(総合○・7点):SSD向けの消去方式(NVMeのSanitizeなど)に対応し、消去の記録(抹消レポート)をテキストやPDFで保存できます。3,960円の買い切りです。

2位 ターミネータ10plus(総合○・6点):消去証明書をPDFで出せる上位版が2026年6月に出ました。SSD向けの消去方式は公式に記載がありません。3位との差は、2026年6月に上位版が出た安定性の1点です。

3位 ドライブクリーナーEX(総合△・5点):ドライブ全体の消去とファイル単位の消去を1本でこなし、3台まで使えます。SSD向けの消去方式と消去の記録は、公式に記載がありませんでした。

データ消去ソフト3本の特徴

1. HD革命/Eraser|SSD向けの消去方式に対応、記録も残せる

HD革命/Eraser Ver.8 パソコン完全抹消は、アーク情報システムが開発するデータ消去ソフトです。インストール後に起動用メディアを作り、そこからパソコンを起動して、Windowsが入っているドライブ全体を消去できます。

Ver.8では、最近のノートパソコンに多いNVMe接続のSSD向けに、「Format NVM」「Sanitize」「暗号化抹消」の方式に対応しました。いずれもSSD自身に全領域を消させる方式です。消去方式は11段階から選べ、空き領域だけの消去や、消去にかかる時間の測定もできます。消去の結果は抹消レポートとして表示でき、テキストファイルやPDFで保存できます。

対応OSはWindows 11/10で、最新の更新は2025年7月17日のVer.8.0.1です。ベクターPCショップでのダウンロード版の価格は3,960円(税込み・買い切り)です。

  • 機能性◎:ドライブ全体を消去でき、SSD向けの消去方式にも対応
  • 使いやすさ○:日本語で使えるが、起動用メディアを作る必要がある
  • コスパ○:3,960円の買い切り
  • 拡張性◎:空き領域だけの消去ができ、抹消レポートをテキストやPDFで保存できる
  • 安定性○:最新の更新は2025年7月で、直近12か月の新しい版は確認できなかった
HD革命/Eraser(ベクターPCショップ)を見る

メリット

  • SSD自身に全領域を消させる方式(Sanitizeなど)が使える
  • 消去の記録をPDFで保存できる
  • 消去方式を11段階から選べる

デメリット

  • 起動用メディアの作成が必要
  • 記録は証明書の形式ではない(抹消レポート)

こんな人におすすめ

  • SSDのパソコンを確実に消去したい
  • 売却や譲渡の前に、念入りに消して記録も残したい

2. ターミネータ10plus|消去証明書をPDFで出せる

ターミネータ10plus データ完全抹消 消去証明書発行機能付は、AIデータのデータ消去ソフトです。2026年6月18日に、従来の製品に消去証明書の発行機能を加えた上位版として提供が始まりました。

専用ツールで作った起動用のUSBメモリかCDからパソコンを起動し、Windowsが起動しないパソコンでも、ドライブ全体を丸ごと上書き消去できます。内蔵のHDD・SSDのほか、USBメモリや外付けのストレージにも対応し、NVMeやeMMCの機器も扱えます。消去の結果をもとに、消去証明書をPDFで出力できます。公式のFAQによると、特定のファイルやフォルダだけを選んで消去することはできません。

ベクターPCショップでの価格は5,280円(税込み・買い切り)です。起動用USBメモリの作成ツールには、Windows 10以降が必要です。

  • 機能性○:ドライブ全体を消去できるが、SSD向けの消去方式は公式に記載がない
  • 使いやすさ○:日本語で使えるが、起動用メディアを作る必要がある
  • コスパ○:5,280円の買い切り
  • 拡張性○:消去証明書をPDFで出せるが、ファイル単位の消去はできない
  • 安定性◎:2026年6月に上位版の提供が始まっている
ターミネータ10plus(ベクターPCショップ)を見る

メリット

  • 消去証明書をPDFで出して残せる
  • Windowsが起動しないパソコンでも使えると公式に明記

デメリット

  • 起動用メディアの作成が必要
  • 3本の中で最も高い

こんな人におすすめ

  • 個人事業や会社のパソコンを処分する
  • 消去した証明を残して提出したい

3. ドライブクリーナーEX|ドライブ全体もファイル単位も1本で

ドライブクリーナーEXは、ソースネクストが販売するデータ消去ソフトです(開発はStellar)。ドライブを丸ごと消す「ドライブイレイサー」と、ファイル単位で消す「ファイルイレイサー」の機能をまとめた製品で、パソコンの処分だけでなく、日ごろの情報漏えい対策にも使えます。

消去方式は、ゼロを1回上書きする通常方式、米国国防総省規格(DoD 5220.22-M)方式、ピーター・グートマン方式の3つです。ドライブ全体のほか、削除済みの領域だけ、ファイル単位、ブラウザの履歴も消去でき、外付けHDDやSDカードにも使えます。USBメモリなどから起動すれば、Windowsごと消去できます。

ソースネクストのダウンロード版は3,980円(税込み・買い切り)で、1ライセンスで3台まで、20年間使えます。対応OSはWindows 11/10(64ビット版)です。発売は2023年12月です。

  • 機能性○:ドライブ全体を消去できるが、SSD向けの消去方式は公式に記載がない
  • 使いやすさ○:日本語で使えるが、Windowsごと消すには起動用メディアが必要
  • コスパ○:3,980円の買い切りで、3台まで使える
  • 拡張性○:ファイル単位や削除済み領域も消せるが、消去の記録は公式に記載がない
  • 安定性○:直近12か月の新しい版は確認できなかった
ドライブクリーナー EX(ソースネクスト)を見る

メリット

  • ドライブ全体もファイル単位も1本で消せる
  • 1ライセンスで3台まで、20年間使える

デメリット

  • SSD向けの消去方式は公式に記載がない
  • 3台を超えると追加のライセンスが必要

こんな人におすすめ

  • 家族の複数のパソコンをまとめて処分する
  • 処分のときだけでなく、普段からファイルを確実に消したい

目的別:パソコンのデータ消去はどれを選ぶか

目的 おすすめ 理由
家庭のパソコンを処分 Windows・Macの標準機能 無料で追加ソフト不要
SSDを念入りに消す HD革命/Eraser SSD向けの方式に対応
消去した証明がほしい ターミネータ10plus 証明書をPDFで出せる
家族の複数台を消す ドライブクリーナーEX 3台まで使える

回収業者の消去サービス・物理破壊

パソコンの電源が入らない場合や、自分で消すのが不安な場合は、有料のサービスを使う方法もあります。Windowsが起動しないだけなら、起動用メディアから動くターミネータ10plusなどでも消去できます。

  • リネットジャパン(小型家電リサイクル法の認定事業者):パソコン回収の「おまかせ安全データ消去サービス」が1台3,498円(税込み)。消去ソフト(Blancco)での消去、強い磁気、物理破壊を行い、消去証明書はマイページで発行されます。なおリネットジャパンも、データは事前に利用者自身で消去してから送るよう案内しています
  • ソフマップ:店頭のHDD破壊サービスが1,500円(税込み、本体からの取り出しは別途1,500円)。客の目の前で破壊します。対象の一覧にSSDは含まれていないため、SSDのパソコンはリネットジャパンなどのサービスを使います
リネットジャパン 公式サイトを見る

家庭向けのパソコンで、PCリサイクルマークが付いているものは、メーカーが無料で回収します(パソコン3R推進協会)。

採点の方法

5軸は、データ消去ソフトで差がつく点に合わせて次のように読み替え、3本すべてに同じ基準で当てはめました。

  • 機能性(消去の確実さ):「Windowsが入っているドライブ全体を消せる」「SSD向けの消去方式(Secure Erase・Sanitizeなど)に公式に対応している」の2つのうち、両方を満たせば◎、1つなら○、どちらもなければ△
  • 使いやすさ(手順の手軽さ):「日本語で使える」「起動用メディアを作らずに、Windowsが入っているドライブ全体を消せる」の2つのうち、両方を満たせば◎、1つなら○、どちらもなければ△
  • コスパ:無料で使えれば◎、有料の買い切りなら○、使い続けるのに毎年の料金がかかるなら△
  • 拡張性(記録と範囲):「消去証明書や記録を出せると公式に書かれている」「ファイル単位や空き領域だけも消せる」の2つのうち、両方を満たせば◎、1つなら○、どちらもなければ△
  • 安定性(更新):直近12か月以内(2025年9月以降)に、新しい版や新製品・上位版の公開を確認できれば◎、確認できなければ○

総合は、◎を2点・○を1点・△を0点として合計し、8点以上を◎、6〜7点を○、5点以下を△としました。順位は合計点の高い順です(同点はありませんでした)。なお、無料の標準機能(Windows・Mac)はソフトと役割が違うため、順位とは別に紹介しています。

よくある質問

Q. SSDのパソコンでも、Windowsの初期化だけで大丈夫ですか?

JEITAは、SSDも現実的にはHDDと同じようにデータを消去すれば十分としています。家庭のパソコンなら、データのクリーニングを「はい」にした初期化で消去すればよいでしょう。仕事のデータを扱っていた場合など、より確実にしたいときは、SSD向けの消去方式に対応したHD革命/Eraserや、業者の有償サービスを使ってください。

Q. 外付けHDDや2台目のドライブはどう消せばいいですか?

Windowsの「diskpart」コマンドの「clean all」を使うと、選んだディスクの全体にゼロを書き込めます(マイクロソフトの公式ドキュメント)。ただしWindowsが入っているディスクは、起動中のWindowsからは消せません。消去したいディスクを選び間違えると別のディスクのデータが消えるので、注意してください。SSDでは、上書きだけでは不十分な場合があります。

Q. 無料の消去ソフトはありますか?

無料のオープンソース「Eraser」(Windows用・英語)は、ファイルやドライブの空き領域を上書きして消去できます。ただしWindowsが動いている状態で使うソフトのため、Windowsが入っているドライブ全体を消す用途には向きません。また「DBAN」は、公式サイトにHDD専用でSSDは消去できず、更新もないと書かれています。パソコンの処分では、まずWindowsの標準機能を使ってください。

Q. 譲渡するとき、Windowsは残しておいていいですか?

JEITAは、初期状態に戻してから譲渡する場合でも、ソフトのライセンス契約に触れる場合があると注意しています。パソコンに最初から入っていたWindowsかどうかなど、ライセンスの扱いはメーカーの案内で確認してください。

Q. ハンマーで壊せば大丈夫ですか?

JEITAも物理的な破壊を有効な方法の1つに挙げていますが、専門の業者に依頼するよう勧めています。自分で壊すとけがをするおそれもあります。動くうちにソフトや標準機能で消去しておくのが安心です。

まとめ:まずは標準機能、SSDや記録が必要なら専用ソフト

家庭のパソコンを処分・譲渡するなら、バックアップとアカウントの解除を済ませてから、Windowsの「PCをリセット」でデータのクリーニングを「はい」にして消去してください。Macは「すべてのコンテンツと設定を消去」です。SSDを念入りに消して記録も残したいなら HD革命/Eraser、消去の証明書が必要なら ターミネータ10plus が向いています。電源が入らないパソコンは、回収業者の有料消去サービスを使ってください。

※ 本記事の情報は、2026年9月24日時点の各公式サイト(JEITA・パソコン3R推進協会・マイクロソフト・Apple・NIST・アーク情報システム・AIデータ・ソースネクスト・リネットジャパン・ソフマップ)と販売店(ベクターPCショップ)の情報に基づきます。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。