会社の案内状に載せる最寄り駅からの道順、資料に入れる都道府県別の色分け、散策イベントのルート図。地図を1枚作るだけのはずが、いざ探すと「地図作成ソフト」と呼ばれるものが驚くほど種類に分かれていて、どれが自分の用件に当たるのか分かりません。
さらに厄介なのが、作ったあとの話です。地図は誰かが測って作ったデータの上に成り立っているので、「無料で作れる」ことと「作った1枚をチラシに刷ってよい」ことは別問題です。Googleマップのコンテンツを印刷物に載せるときの条件、国土地理院の地図を使うときの申請の要否は、それぞれ公式に文章で決められています。そこを確かめずに刷ってしまうと、あとから差し替えることになります。
この記事では、自分で地図を作れる無料のソフト・アプリ6本を、作図の幅・日本語で迷わず使えるか・無料のままどこまでできるか・データを出し入れできるか・いまも更新されているかの5軸で採点しました。あわせて、各ツールで作った地図を配布物に載せてよい条件も、公式ページの記載から整理しています。料金・バージョン・利用条件は2026年10月10日時点の各公式サイトで確かめました。
先に結論
- 日本の地図に線と文字を足して、そのまま画像で出したいなら地理院地図。ブラウザで開くだけ、登録もインストールも不要で、申請が要るかどうかの案内まで公式にそろっています
- 縮尺の正しい地図を大判で印刷したいならQGIS。印刷レイアウト機能まで無料ですが、背景の地図データは自分で用意します
- 都道府県や市区町村を色分けした図を5分で作りたいなら白地図ぬりぬり。登録不要で、商用利用まで無料と公式が明記しています
- 住所の一覧をそのまま地図に落としたいならGoogleマイマップ。CSVやスプレッドシートを読み込めますが、印刷物での利用には部数と帰属表示の条件が付きます
- Excelの統計データを塗り分けた主題図にしたいならMANDARA。無料で分析機能まで備えますが、本体の更新は2022年4月で止まっています
- 山のルート図や地形の断面図を作りたいならカシミール3D。1:25000の地形図を扱えますが、前準備に手間がかかります
- 道路をデフォルメしてアイコンを置く「チラシ用の案内図」は無料勢では作れないため、買い切りのWindowsソフトを番外編で紹介します
「地図を作る」には4つの違う作業が混ざっている
「地図作成ソフト」で検索しても決め手が見つからないのは、ひとつの言葉に性質の違う作業が同居しているからです。実際には次の4つに分かれます。
① 案内図・アクセスマップを作る:最寄り駅から店までの道順を、必要な道路と目印だけ残してデフォルメした図です。チラシ・案内状・ホームページのアクセスページに載せます。
② 統計地図(主題図)を作る:都道府県別の人口や売上を色分けした図です。Excelの数字が手元にあり、それを地図の形で見せたいときに使います。
③ 本格的なGISで地図を仕上げる:測量データや公開されている地理データを重ね、縮尺を合わせて印刷用の地図に仕上げます。
④ 地形・登山の地図を作る:等高線のある地形図にルートを引き、断面図で登りの厳しさを確かめます。
この4つは必要な機能がまったく違うので、ひとつのソフトで全部をまかなうことはできません。本記事では6本それぞれがどれを得意とするかを明記し、最後の用途別まとめで対応づけています。
ひとつ先に断っておくと、このうち①のデフォルメした案内図だけは、無料の6本では作れません。無料で使えるものはどれも実際の地図を土台にしていて、必要な道路だけを太く描き直す作りになっていないためです。②③④は無料で足ります。①が目的の人は、番外編の買い切りソフトまで読み飛ばしてください。
もうひとつ、どのツールを選んでも付いて回るのが「作った地図をどこに載せてよいか」です。白地図ぬりぬりのように商用利用まで無料と明記しているところもあれば、Googleマップのように印刷物の部数まで条件が決められているところもあります。無料で作れたから自由に使える、とはなりません。各ツールの説明のなかで、公式が示している条件をそのまま載せています。
無料で地図を作れる6本の早見表
※ 2026年10月10日時点の各公式サイトの記載です。
※ 地理院地図は、印刷・画像として保存・作図の3つがスマートフォンでは使えないと公式ヘルプに書かれています。パソコン前提の評価です。
※ QGISは公式ダウンロードページで長期リリース版(LTR)3.44と最新版4.2が配布されています。
※ 白地図ぬりぬりはアカウント登録なしで使え、保存・PNG/SVGのダウンロードまで無料です。
※ Googleマイマップの利用にはGoogleアカウントが必要です。1つの地図に追加できるレイヤは最大10個です。
※ MANDARAはWindows版の本体(MANDARA10)とブラウザ版(MANDARA JS)があります。ブラウザ版にはマップエディタなど一部の機能が含まれません。
※ カシミール3Dの本体は無料ですが、より詳しい地形データは別途有料のものがあります。
6本の採点結果
順位は、5軸を◎2点・○1点・△0点で合計し、点数の高い順に並べました。合計が9点以上なら総合◎、6〜8点なら総合○、5点以下なら総合△です。同点のときは、この記事の主軸である「機能性(自分で描いて、人に渡せる形で出せるか)」が上のほうを上にします。それでも並ぶときは、2番目の基準として使いやすさが上のほうを上にします。
1位 地理院地図:2位のQGISに対して、使いやすさで大きく差がつきました。ブラウザで開くだけで、インストールもアカウント登録もいりません。日本の地図が最初から入っているので、背景を用意する手間もありません。機能性・コスパ・拡張性・安定性はQGISと並んで◎で、5軸に欠けがない唯一の1本です。
2位 QGIS:3位の白地図ぬりぬりと8点で並びましたが、同点処理の基準である機能性で差がつきました。QGISは点・線・面を自由に描いてレイアウトデザイナーで大判の印刷物まで仕上げられるのに対し、白地図ぬりぬりは色を塗ることに特化していて、道路や記号を描く機能がありません。順位が1位に届かないのは使いやすさで、インストールが必要なうえ、背景に使う地図データを自分で探して読み込むところから始めます。
3位 白地図ぬりぬり:4位のGoogleマイマップに対して、使いやすさとコスパで1段ずつ上回りました。アカウント登録なしで、地図を選んで色をクリックするだけで始められ、保存もPNG・SVGのダウンロードも無料です。順位が2位に届かないのは機能性で、塗り分けと凡例に用途が限られます。
4位 Googleマイマップ:5位のMANDARAに対して、安定性で上回りました。ブラウザで動き、環境の古さを気にせず使えます。拡張性はどちらも◎で、CSV・KML・GPX・XLSXなど7つの形式を読み込め、KML/KMZで書き出せます。順位が3位に届かないのはコスパで、1つの地図に追加できるレイヤは最大10個、読み込むファイルは2,000行までという上限が公式に示されています。
5位 MANDARA:6位のカシミール3Dと6点で並びましたが、同点処理の2番目の基準である使いやすさで差がつきました。MANDARAはExcelでタグを付けたデータをコピーして貼り付けるだけで主題図が描けるのに対し、カシミール3Dは本体のインストールに加えて地図データの追加設定が要ります。順位が4位に届かないのは安定性で、本体の更新履歴は2022年4月2日が最後です。
6位 カシミール3D:5軸のうち機能性と拡張性はMANDARAと同じで、安定性ではMANDARAより上(◎対△)です。それでも順位が下になるのは、主軸の次に見る使いやすさと、コスパの2軸で1段ずつ落ちるためです。より詳しい地形データは別途有料で、使う地図ごとに利用条件も変わります。その代わり1:25000の地形図を扱えるので、山の地図という用途では代わりがありません。
採点の基準
- 機能性:地図を作る側の機能の幅。線・面・記号を自由に描けて文字も入れられ、画像か印刷で出せるなら◎。描ける対象が決まっている(地点とルートが中心、塗り分け専用など)なら○。表示が中心で作図が補助にとどまるなら△
- 使いやすさ:日本語の画面で、インストールもアカウント登録もなしに描き始められるなら◎。日本語だが、インストールかアカウント登録のどちらかが要るなら○。日本語でも、前準備(背景データの用意・地図データの追加設定)や専門用語が多いなら△
- コスパ:無料で上限の記載がないなら◎。無料だが上限・制限が公式に示されている、または一部の機能やデータが有料なら○。継続課金が前提なら△
- 拡張性:データの出し入れ。標準的な形式(KML・GeoJSON・シェープファイル・CSVなど)の読み込みと書き出しの両方に対応するなら◎。どちらか一方なら○。画像で出すだけなら△。書き出した画像で印刷できるかは機能性で数えているため、ここには入れていません
- 安定性:直近1年以内(2025年10月以降)の更新か、ブラウザで動くサービスとしての運用が公式に確認できるなら◎。1〜3年前の更新なら○。3年を超えて更新が確認できない、または公式の対応OSの記載が現行のWindowsに届いていないなら△
Googleマイマップと白地図ぬりぬりはブラウザで動くサービスのため、「更新の新しさ」ではなく運用が続いているかで安定性を判定しました。MANDARAはWindows版の本体(MANDARA10)を基準に採点し、ブラウザ版(MANDARA JS)は補足として扱っています。
詳細比較:読み込める形式と、作った地図の使い方
| ソフト・ツール | 読み込める形式 | 書き出し | 作った地図の利用条件 | 最新版・更新 | 動く環境 |
|---|---|---|---|---|---|
| 地理院地図 | KML/GeoJSON/GeoTIFF/CSV | PNG画像・印刷/KML・GeoJSON | 出典の記載。成果の種類により申請の要否あり | 2026年9月30日にタイル更新 | ブラウザ |
| QGIS | 多数(シェープ等) | 印刷レイアウト・各種形式 | ソフトはGPLv2+。地図データは提供元の条件 | LTR 3.44/最新 4.2 | Win/Mac/Linux |
| 白地図ぬりぬり | 保存した地図をIDで再開 | PNG/SVG | 商用利用を含め無料と公式に明記 | 運用中(2026年表記) | ブラウザ |
| Googleマイマップ | CSV/TSV/KML/KMZ/GPX/XLSX/スプレッドシート | KML/KMZ・印刷 | Geo Guidelinesに従う。帰属表示が必須 | 運用中 | ブラウザ/スマホ |
| MANDARA | Excel/CSV/シェープ/KML | 画像・印刷 | 「ご自由にお使いください」と公式に明記 | 10.0.1.6(2022年4月2日) | Windows/ブラウザ |
| カシミール3D | GPSデータ・各種地図データ | 画像・印刷 | 使う地図データごとに条件が変わる | Ver9.4.2(2025年4月16日) | Windows |
※ 2026年10月10日時点の各公式サイト・公式ヘルプの記載です。
※ 地理院地図の画像保存はPNG形式で、保存範囲を「表示されている範囲全体」「範囲を固定」「大きさを固定」から選べます。
※ Googleマイマップが読み込めるファイルは、KMLが5MBまで、その他が40MBまで、行数は2,000までと公式に書かれています。写真は一度に最大100枚です。
6本の特徴
1. 地理院地図|日本の地図に線と文字を足して、そのままPNGで出せる
国土地理院が運営するウェブ地図です。ブラウザで開くだけで使え、インストールもアカウント登録もいりません。作図機能で線や面を描き、注記(文字)も入れられるので、散策コースのルート案内図や学習用のオリジナル地図をその場で仕上げられます。作図した内容はKML形式またはGeoJSON形式で保存でき、読み込みはKML・GeoJSON・GeoTIFF・CSVに対応します(いずれも公式の操作マニュアルに記載)。
仕上げは「共有」から画像として保存でき、ファイル形式はPNGです。保存範囲は「表示されている範囲全体」「範囲を固定(四隅の緯度経度を指定)」「大きさを固定(ピクセル数を指定)」の3通りから選べるので、資料の枠に合わせた大きさで出せます。ほかにも距離・面積の計測、指定した経路の断面図(グラフも画像で保存可)、磁北線・方位線・等距圏の表示、新旧の空中写真の比較が無料で使えます。2026年9月30日には中・小縮尺のタイルがリニューアルされ、情報の充実と表現の統一感が図られました。
利用条件が公式に整理されているのも、この1本の強みです。基本測量成果にあたる地図を使う場合、測量法第29条(複製)・第30条(使用)に基づく承認申請が必要な場合と、申請は不要で出典の明示だけで利用できる場合の二通りがあり、国土地理院は「デザイン、内部利用、テレビ番組、書籍の挿入図などは申請不要」と案内しています。申請が必要な場合の標準処理期間は、申請書の到着から7日〜14日(土日祝日・年末年始を除く)です。
5軸では、線・面・注記を描いてPNGで出せる機能性◎、ブラウザだけで始められる使いやすさ◎、上限の記載がない無料のコスパ◎、4形式の読み込みとKML・GeoJSONでの書き出しに対応する拡張性◎、2026年9月に更新が入っている安定性◎としました。
メリット
- インストールもアカウント登録も不要で、開いてすぐ描ける
- 日本の地形図・空中写真・災害リスクの地図が最初から入っている
- 画像の保存範囲をピクセル数や緯度経度で固定できる
- 申請が要るかどうかの案内と出典の記載例が公式にそろっている
デメリット
- 印刷・画像として保存・作図はスマートフォンでは使えない
- 道路をデフォルメした案内図は作れない(実際の地図が土台)
- 国土地理院の地図なので、日本国外の詳しい地図は扱えない
こんな人におすすめ
- 資料に入れる地図を、今すぐ1枚だけ作りたい人
- 出典の書き方まで公式の案内に従って進めたい人
- 土地の成り立ちや標高も一緒に見せたい人
2. QGIS|印刷レイアウトまで備えた無料のGIS
GNU GPLv2+で公開されているオープンソースのGISです。Windows・macOS・Linuxに対応し、公式のダウンロードページでは長期リリース版(LTR)3.44と最新版4.2が配布されています。長く使うなら更新の間隔が安定しているLTRを選ぶのが無難です。
点・線・面のデジタイズに加えて、曲線やCADのような作図支援も備えます。前述の地理院地図と大きく違うのはレイアウトデザイナーで、紙のサイズを決めて縮尺・凡例・方位記号・スケールバーを配置し、大判の印刷用地図として書き出せます。地図と表を組み合わせて連続出力するアトラス機能もあるため、支店ごと・地区ごとに同じ体裁の地図を量産する用途にも向きます。読み書きできるデータ形式は幅広く、プラグインで機能を足すこともできます。
一方で、起動しただけでは何も表示されません。背景に使う地図データを自分で探して読み込むところから始まるため、最初の1枚に届くまでの距離は6本のなかで最も長くなります。地理院タイルなど日本の地図を背景にする場合は、その地図データ側の利用条件を別途確認する必要があります。ソフトがGPLであることと、地図データを配布物に使ってよいかは別の話です。
5軸では、印刷レイアウトまで届く機能性◎、無料で上限の記載がないコスパ◎、形式とプラグインの幅がある拡張性◎、LTRと最新版が並行して配布されている安定性◎としました。使いやすさは、インストールと背景データの用意という前準備が必要なため△です。
メリット
- 縮尺・凡例・方位記号を置いた印刷用の地図を作れる
- アトラス機能で同じ体裁の地図をまとめて出力できる
- Windows・macOS・Linuxのどれでも同じ画面で使える
- LTRと最新版が並行して配布され、長期運用しやすい
デメリット
- 背景に使う地図データは自分で探して読み込む必要がある
- レイヤ・投影法・座標参照系など前提知識が要る
- 1枚だけ作りたい用途には手数が多すぎる
こんな人におすすめ
- 縮尺の正しい地図を大判で印刷したい人
- 公開されている地理データを重ねて分析したい人
- 同じ体裁の地図を地区ごとに量産したい人
3. 白地図ぬりぬり|都道府県や市区町村をクリックで塗り分けられる
「白地図専門店」が運営するウェブアプリです。日本地図・世界地図・市区町村などの白地図を選び、パレットから色を選んで塗りたい場所をクリック(スマートフォンではタップ)するだけで塗り分けが進みます。アカウント登録は不要で、地図を保存するとURLが発行され、再編集・PNGやSVGのダウンロード・マイページでの管理がすべて無料です。凡例機能とキーボードショートカットもあり、塗った地図はCanvaで仕上げる導線も用意されています。
利用条件の明快さが、このツールの価値を押し上げています。公式の料金欄に「利用料金は不要です。商用利用を含めたあらゆる用途に無料でご利用いただけます」と書かれており、紙の白地図の販売と広告で運営していることも明記されています。色を塗った地図は最低1年間サーバーに保存されるとされているので、手元に残したいものはダウンロードしておくのが確実です。2014年のサービス開始から累計200万人以上が利用したと公式が公表しています。
できることは塗り分けに特化しているため、道路を引いたり建物の記号を置いたりはできません。「行ったことのある都道府県」「営業エリア」「商圏」のように、面を色で塗り分けて伝える図に用途を絞って使うツールです。SVGで書き出せる点は実務で効きます。ベクター形式なので、Illustratorなどで文字や凡例を足しても線がぼけません。
5軸では、登録不要でクリックだけの使いやすさ◎、商用利用まで無料のコスパ◎、ウェブサービスとして運用が続く安定性◎としました。機能性は塗り分けと凡例に限られるため○、拡張性はPNG・SVGの書き出しが中心で読み込みの記載が見当たらないため○です。
メリット
- アカウント登録なしで、開いてすぐ塗り始められる
- 商用利用を含めて無料と公式が明記している
- SVGで書き出せるので、拡大しても線がぼけない
- 市区町村単位・世界各国の白地図もそろっている
デメリット
- 道路や建物を描く機能はない(塗り分け専用)
- 保存期間は最低1年間とされ、長期保管には向かない
- 統計データを読み込んで自動で階級分けする機能はない
こんな人におすすめ
- 営業エリアや商圏を色で示した図を5分で作りたい人
- 利用条件を気にせず資料や印刷物に載せたい人
- 塗った図をあとからデザインソフトで仕上げたい人
4. Googleマイマップ|住所の一覧をそのまま地図に落とせる
Googleアカウントがあれば無料で使えるウェブサービスです。地図上にピン・線・図形・ルートを置き、色やアイコンを設定できます。1つの地図に追加できるレイヤは最大10個で、レストランは1つのレイヤ、カフェは別のレイヤ、というように対象物を分けて管理できます。レイヤごとに「均一スタイル」「続き番号」「個別スタイル」「データ列別のスタイル」を選べるため、持っているデータの値で色分けすることもできます。
強いのは読み込みです。CSV・TSV・KML・KMZ・GPX・XLSX・Googleスプレッドシート・Googleドライブやフォトに保存した写真を取り込めます。ファイルの先頭行にタイトルがあり、緯度経度・住所・場所の名前・WKT形式のいずれかの列があれば、住所が並んだ表をそのまま地図に落とせます。制限として、行数が2,000を超えるファイルはインポートしないよう公式に書かれており、KMLは5MBまで、その他のファイルは40MBまで、写真は一度に最大100枚です。書き出しはメニューから「KML / KMZ にエクスポート」、印刷は「地図の印刷」で行います。
注意が要るのは、できあがった地図をどこに載せるかです。Googleマップ・Google Earth・ストリートビューのコンテンツを使う場合はGeo Guidelinesに従うことになっており、印刷物では「書籍(教科書を含む、5,000部まで)」「新聞・雑誌などの定期刊行物」「会社の報告書・提案書・プレゼン資料などのビジネス文書」「名刺・パンフレット・配布物・チラシなど販促物での補助的な案内地図(5,000部まで)」が許容されています。公式はその例として「歯科医院がダイレクトメール広告の下部に小さな地図を載せて場所を示す」ケースを挙げています。一方で「5,000部を超える書籍や書籍の表紙」「ツアーブックやガイドブックのような印刷されたナビゲーション資料の中核としての利用」「Tシャツ・マグカップなどの消費財やパッケージ」「印刷広告での主役・創作的な利用」は不可とされています。いずれの場合もGoogleへの帰属表示が必須で、表示を消したり切り取ったり、コンテンツから離れた場所に移したりしてはいけないと明記されています。なお、ウェブサイトにGoogleマップを埋め込むだけなら許可は不要です。
5軸では、7形式を読み込みKML/KMZで書き出せる拡張性◎、ブラウザで運用が続く安定性◎としました。機能性は描ける対象が地点・線・図形・ルートに決まっているため○、Googleアカウントが要る使いやすさは○、レイヤ10個・2,000行という上限があるコスパも○です。
メリット
- 住所が並んだCSVやスプレッドシートをそのまま地図にできる
- レイヤを分けて、対象物の種類ごとに色やアイコンを変えられる
- KML/KMZで書き出せるので、他のGISにも持っていける
- ウェブサイトへの埋め込みは許可が不要
デメリット
- 印刷物での利用に部数の条件があり、帰属表示も必須
- 1つの地図はレイヤ10個、読み込みは2,000行までが上限
- Googleアカウントなしでは地図を作れない
こんな人におすすめ
- 店舗や訪問先の一覧を地図の形で共有したい人
- 作った地図をウェブサイトに埋め込みたい人
- スマートフォンからも同じ地図を開きたい人
5. MANDARA|Excelの統計データをそのまま主題図にできる
地理情報分析支援システムとして公開されているフリーのGISソフトです。Windows版の本体(MANDARA10)と、ブラウザで動くMANDARA JSがあります。得意なのは統計地図で、Excelで作成した地域統計データを地図にすることに最適化されています。Excel上でMANDARAタグを付けたデータをコピーして貼り付けるか、CSVファイルを読み込ませると、塗りつぶし・記号・グラフ・等値線など多彩な表現で主題図が描けます。
市町村別などの付属地図ファイルのほか、シェープファイルやKMLファイルからもデータを取得できます。分析メニューには散布図からの回帰分析、ローレンツ曲線とジニ係数の計算、空間的自己相関分析(モランのI統計量)まで含まれており、無料のソフトとしては踏み込んだ内容です。ブラウザ版のMANDARA JSはOSを問わずタブレットでも使え、シェープファイル一式やzipをドラッグ&ドロップで読み込めますが、マップエディタやハッチモードなど一部の機能は含まれません。
作った地図の扱いもはっきりしています。公式サイトに「MANDARAで作成した地図はご自由にお使いください。メールでの使用許諾依頼は不要です。書籍・雑誌等で紹介される際も連絡不要です」と書かれており、ソースコードはCC BY-SAで公開されています。一方で、本体の更新履歴は10.0.1.6(2022年4月2日)が最後で、公式が示す対応OSはWindows 7/8/8.1/10です。Windows 11の記載は2026年10月10日時点で見当たりません。動かなくなったわけではありませんが、今後のOS更新に追従するかは別に考えておく必要があります。
5軸では、無料で上限の記載がないコスパ◎、Excel・CSV・シェープ・KMLを読み込める拡張性◎としました。機能性は統計地図に特化しているため○、インストールとデータの準備が要る使いやすさも○です。安定性は、本体の更新が3年を超えて止まっており、対応OSの記載も現行のWindowsに届いていないため△としました。
メリット
- Excelのデータを貼り付けるだけで主題図が描ける
- 回帰分析・ジニ係数・空間的自己相関まで無料で使える
- 作った地図を自由に使ってよいと公式が明記している
- ブラウザ版(MANDARA JS)はOSを問わず動く
デメリット
- 本体の更新が2022年4月で止まっている
- 公式の対応OSにWindows 11の記載が見当たらない
- ブラウザ版はマップエディタなど一部機能が使えない
こんな人におすすめ
- 都道府県別・市町村別のデータを色分けして見せたい人
- 地図を作るだけでなく、統計的な分析もしたい人
- 作った地図を論文や書籍に載せたい人
6. カシミール3D|地形図と標高データで、山のルート図まで作れる
地図ブラウザ機能を基本に、風景CG作成・GPSデータのビューワと編集・ムービー作成・山岳展望を備えたWindows用のフリーソフトです。国土地理院の数値地図をはじめ、スイス地理局の数値地図、米USGSの地図、ランドサット衛星画像、火星まで、世界中の地図・地形データと衛星写真を扱えます。市販の電子地図では詳細が分からない山間部も、1:25000の詳細な地形図で見られるのが最大の持ち味です。
ルートを引いて断面図を出せるので、登山計画で登り下りの厳しさを事前に確かめる用途に向きます。最新版はVer9.4.2(2025年4月16日)で、基盤地図情報プラグインは2025年3月31日に1mメッシュの標高データへ対応しました。6本のなかでは、地理院地図・QGISと並んで更新が新しい部類です。
ただし、起動してすぐ使い始められるソフトではありません。本体をインストールしたうえで、使いたい地図データやプラグインを追加していく設計で、最初の設定に時間がかかります。また、より詳しい地形を扱う「スーパー地形データ」や、地図を継続して使う「山旅倶楽部」は別途の有料提供です。本体が無料でも、使う地図データごとに費用と利用条件が変わる点は、配布物に載せる前に確認が必要です。
5軸では、GPSデータと各種地図データを扱える拡張性◎、2025年4月の更新が確認できる安定性◎としました。機能性は地図表示とルート・断面図が中心で、案内図の作図には向かないため○。前準備が多い使いやすさは△、詳しい地形データが有料であるコスパは○です。
メリット
- 1:25000の地形図で山間部まで細かく見られる
- ルートの断面図で登り下りの厳しさを事前に確かめられる
- GPSのログを読み込んで編集できる
- 2025年4月の更新で1mメッシュの標高データに対応
デメリット
- 地図データの追加設定が必要で、最初の1枚まで時間がかかる
- 詳しい地形データは別途有料
- Windows専用で、MacやiPhoneでは使えない
こんな人におすすめ
- 登山やトレッキングのルート図を作りたい人
- 地形の起伏を断面図や3Dで確かめたい人
- GPSで記録した軌跡を地図に重ねたい人
番外編:デフォルメした案内図は買い切りソフトが受け持つ
ここまでの6本は、実際の地図を土台にして線や色を足していく道具です。無料勢で埋まらない穴がひとつ残ります。道路をデフォルメして引き、アイコンを置いて作る「チラシ用の案内図」です。実際の地図をそのまま縮めると、印刷したときに線が細く、必要のない情報まで載ってしまいます。駅から店までの道順だけを大きく見せる図は、専用のソフトで描くほうが早く、仕上がりもそろいます。この用途を受け持つのが、買い切りのWindowsソフト2本です。
あんない地図Maker9(nyao soft♪・2,970円税込/1ライセンス)は、碁盤状のマス目にアイコンを置いていく方式のソフトです。アイコンは700種類あり、道路・線路、塗り潰し、左右反転・上下反転・回転、文字入力、写真、クリップボード、道路番号、建物・マークなどが用意されています。道路と線路は線を引くように描け、斜めの道路にも対応します。地図キャンバスは最大36×36マス(1728×1728ピクセル)で、48ピクセル単位で変更できます。保存はPNGとJPGで、PDFにしたい場合はプリンターを「Microsoft Print to PDF」に設定して印刷すれば作れます。2026年10月10日時点の最新はVer9.02です。無料でダウンロードして試せますが、購入前は保存とコピーができません。
地図くりえーたー3(ソースネクスト・ダウンロード版6,380円税込)は、作図でアクセスマップを引くソフトです。開発は有限会社ライラックシステムで、ソースネクストが販売しています。直線・連続線・二重線・四角形・多角形・円・フリー曲線で地図を描き、道路の交差点部分を自動でつなげ、フリーハンドの曲線を自動でレイアウトしてくれます。アイコンは地図記号・建物・信号機・コンビニ・注意書きなど590点以上を収録し、図形ツールで自作して登録もできます。16階層のレイヤー機能があり、縮尺指定で1/1000から1/10万の縮尺図を印刷紙に描けるほか、徒歩や車での到達時間や道のりを測る機能も備えます。スキャナやデジカメで取り込んだ手書きの地図(BMP・JPEG・GIF)を下絵として読み込めるうえ、作業画面を透過させて下のウィンドウに表示した地図をなぞって描くこともできます。白黒・カラー・グラデーション・影付きはワンタッチで切り替えられます。書き出しはJPEG・GIF・PNG・BMPに加えてEMF(拡張メタファイル)に対応し、EMFはベクター形式なのでチラシの版下に置いても線がぼけません。
購入前に1点だけ確かめてください。公式の動作環境に書かれているのはWindows 10(32ビット/64ビット版)だけで、Windows 11の記載は2026年10月10日時点で見当たりません。ハードディスクは100MB以上の空き容量、ディスプレイは解像度1024×768以上が条件です。ソースネクストの「安心サービス」の対象製品にあたるため、ユーザー登録と購入履歴の確認を条件に、購入30日以内であれば正常に動作しない場合に返品できると公式に書かれています。Windows 11で使う場合は、この返品の条件を確認したうえで試すのが安全です。
地図くりえーたー3(ソースネクスト)を見る2本の使い分けは、価格ではなく出口で決まります。アイコンを並べてホームページや案内状に載せる画像を作るだけなら、2,970円のあんない地図Maker9で足ります。縮尺を合わせたい、EMFのベクター形式で印刷の版下に渡したい、手書きの下絵や他の地図をなぞって描きたいなら、地図くりえーたー3の機能が要ります。どちらも要らない人は、無料の6本で十分に足ります。
用途別おすすめまとめ
| 目的 | おすすめ | 理由 |
|---|---|---|
| 資料に入れる地図を今すぐ1枚作る | 地理院地図 | 登録もインストールも不要で、PNGで保存できる |
| 縮尺の正しい地図を大判で印刷する | QGIS | レイアウトデザイナーで印刷用の地図に仕上げられる |
| 都道府県や市区町村を色分けする | 白地図ぬりぬり | クリックで塗れて、商用利用まで無料と明記されている |
| 住所の一覧を地図に落とす | Googleマイマップ | CSVやスプレッドシートをそのまま読み込める |
| Excelの統計データを主題図にする | MANDARA | タグ付きデータを貼り付けるだけで塗り分けられる |
| 登山ルートと地形の断面図を作る | カシミール3D | 1:25000の地形図でルートと断面図を扱える |
| チラシ用の案内図を安く作る | あんない地図Maker9 | 2,970円でアイコンを並べて案内図を作れる |
| 縮尺付きの案内図を版下に渡す | 地図くりえーたー3 | 1/1000〜1/10万の縮尺指定とEMF出力に対応する |
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地図を作るときに気をつけること
出典と帰属表示を先に決める
地図は誰かが測って作ったデータの上に成り立っています。地理院地図を使うなら「出典:国土地理院ウェブサイト(URL)」の形で出典を記載し、編集・加工したときはそれを行ったことも別に書きます。Googleマップのコンテンツを使うなら、Googleへの帰属表示を消さず、切り取らず、コンテンツのすぐ近くに残します。どこに何と書くかは、地図を作り始める前に決めておくと、レイアウトの最後で入れる場所がなくなる事態を避けられます。
配る枚数で条件が変わることがある
同じ地図でも、配る枚数によって扱いが変わります。Googleの場合、書籍や販促物に載せられるのは5,000部までで、それを超える書籍や、ガイドブックのように地図が資料の中核になる使い方は認められていません。国土地理院の場合も、測量成果にあたる地図を使うときは申請の要否が分かれます。刷る前に、刷る枚数と用途をセットで確認してください。
実際の地図をなぞって描くときの線引きを意識する
地図くりえーたー3の透過機能のように、他の地図を下敷きにして自分で描く手順を備えたソフトがあります。自分の手で道路と目印をデフォルメして描き起こすなら自分の作図ですが、元の地図の表現をそのまま写し取れば、元の地図の複製に近づきます。元の地図の利用条件を確認してから下敷きにするのが安全です。公開されている白地図素材を使う場合も、素材ごとの利用条件は別にあります。
無料で使える範囲は公式ページで最新を見る
この記事の条件は2026年10月10日時点のものです。無料プランの上限や利用条件は予告なく変わります。特にGoogleマイマップの行数・レイヤ数の上限と、Geo Guidelinesの印刷物の条件は、Googleの都合で改定されます。作り始める前に、各公式ページをもう一度開いて確かめるのが確実です。
よくある質問
Q. 無料で作った地図を、会社のチラシに載せても大丈夫ですか?
ツールごとに条件が違います。白地図ぬりぬりは「商用利用を含めたあらゆる用途に無料」と公式に明記しています。MANDARAも「作成した地図はご自由にお使いください」としています。地理院地図は出典の記載が必要で、使う地図の種類によっては申請が要る場合があります。Googleマイマップは5,000部までの販促物で補助的な案内地図として使え、Googleへの帰属表示が必須です。刷る枚数と使い方を決めてから、該当する条件を公式ページで確認してください。
Q. スマートフォンだけで地図を作れますか?
Googleマイマップはスマートフォンのアプリからも地図を作れます。白地図ぬりぬりもブラウザで動き、タップで色を塗れます。一方、地理院地図は印刷・画像として保存・作図の3つがスマートフォンでは使えないと公式ヘルプに書かれているため、仕上げまでやるならパソコンが必要です。QGIS・MANDARA10・カシミール3Dはパソコン用のソフトです。
Q. Googleマップのスクリーンショットをそのまま使ってもいいですか?
Geo Guidelinesの範囲内であれば使える場面があります。会社の報告書・提案書・プレゼン資料などのビジネス文書、名刺・パンフレット・チラシに補助的な案内地図として載せる(5,000部まで)といった用途は認められています。ただしGoogleへの帰属表示を消したり切り取ったりしてはいけません。ガイドブックのように地図が中核となる印刷物や、Tシャツ・マグカップなどの商品への利用は認められていません。
Q. 手書きで描いた地図を、パソコンできれいに清書できますか?
地図くりえーたー3には、スキャナやデジカメで取り込んだ手書きの地図(BMP・JPEG・GIF)を下絵として読み込む機能があります。作業画面を透過させて、下のウィンドウに表示した地図をなぞることもできます。無料の6本には、この用途に向いた機能は見当たりませんでした。
Q. 都道府県別のデータを色分けした地図を作りたいです
手早く見た目を作るなら白地図ぬりぬり、数値から自動で階級分けしたいならMANDARAです。白地図ぬりぬりは自分で色を選んで塗っていく方式で、MANDARAはExcelの数値をもとに塗りつぶしや等値線で表現します。データの件数が多く、階級の区切りも検討したい場合はMANDARAのほうが向いています。
Q. 作った地図をホームページに載せたいです
地理院地図・白地図ぬりぬり・MANDARAは画像として書き出せるので、そのまま画像として掲載できます(出典や条件は各ツールの記載に従ってください)。Googleマップをウェブサイトに埋め込むだけなら、Googleの許可は不要と公式に書かれています。マイマップで作った地図を共有する場合は、公開範囲の設定を確認してから埋め込んでください。
まとめ:まずは地理院地図から試そう
地図を1枚作るだけなら、地理院地図がいちばん近道です。ブラウザで開いて、線と文字を足して、PNGで保存する。この3手で終わります。日本の地形図が最初から入っていて、出典の書き方と申請の要否まで公式に整理されているので、作ったあとで困ることもありません。5軸のすべてで◎が付いたのは6本のなかでこれだけでした。
用途がはっきりしているなら、迷わずそちらへ進んでください。色分けの図なら白地図ぬりぬり、住所の一覧ならGoogleマイマップ、Excelの統計ならMANDARA、縮尺の正しい印刷物ならQGIS、山の地図ならカシミール3Dです。どれも無料で、今日のうちに試せます。
道路をデフォルメした案内図だけは、無料勢では届きません。2,970円のあんない地図Maker9か、縮尺とベクター出力まで必要なら6,380円の地図くりえーたー3を検討してください。どちらも買い切りで、継続の費用はかかりません。
※料金・バージョン・利用条件は2026年10月10日時点のものです。最新は各公式サイトでご確認ください。



